米国の美術家、マシュー・バーニー。
伝説的フィルム作品『クレマスター』サイクル全5部作の中で、唯一 台詞があるドラマ。
CREMASTER 2, 1999 Photo Michael James O’Brien
© Matthew Barney, courtesy Gladstone Gallery, New York and Brussels
マシュー・バーニー『クレマスター』シリーズ5部作で最も広範囲に及ぶ舞台。モルモン教のユタ州、ロッキー山脈、塩湖で展開するゴシック・ウエスタン
『クレマスター2』
1999年/アメリカ/カラー/35mm/79分00秒/1:1.66/ドルビーSR
【スタッフ】
脚本・監督:マシュー・バーニー
制作: バーバラ・グラッドストーン、マシュー・バーニー
撮影: ピーター・ストライトマン
音楽: ジョナサン・べプラー
視覚効果:カレン・アンセル(モビリティ)
特殊効果:ゲイブ・バルタロス(アトランティック・ウエスト・エフェクト)
スチール:マイケル・ジェームズ・オブライアン(人物担当)、クリス・ウィジェット(風景担当)
ヘアメイク:レジーナ・ハリス
靴提供 :プラダ
衣装 :ディーン・ソネンバーグ(フェイのみ)、リンダ・ラベル、ローレンス・エスノールト
【キャスト】
ハリー・フーディーニ:ノーマン・メイラー
ゲイリー・ギルモア:マシュー・バーニー
フェイ:匿名
ベッシー・ギルモア:ローレン・パイン
フランク・ギルモア:スコット・イウォルト
ニコル・ベイカー:パティ・グリフィン
マックス・ジャンセン:マイケル・トンプソン
ジョニー・キャッシュ:デイブ・ロンバルド(ドラム)、ブルース・スティール(ミツバチとともに)、スティーブ・タッカー(声)
ステップ・ダンサーズ:キャット・キュービック、サム・ジェラージ
ブラーマ・ブル:#55
フレンチブルドッグ:ジャクリーヌ・モラシッズ
車両:1966年型マスタング(白1台、青1台)
マシュー・バーニー『クレマスター2』
【あらすじ】
米国・西部。
そこではロッキー山脈と氷河、ソルトレイク(塩湖)が物語の目撃者となる!
少年時代から、刑務所生活を送ってきたゲイリー・ギルモア。今は仮釈放中だ。ゲイリーの母、ベッシー・ギルモアの故郷となるユタ州にいた。そこはモルモン教誕生の地でもある。
ゲイリーと交際中のニコル・ベイカーは、自分の愛車と色違いの1996年型マスタングに乗っている。ふたりがドライブの途中、ガソリンスタンドに立ち寄るとトイレで、なんと!ゲイリー・ギルモアは従業員を銃殺してしまう。後頭部を撃ち抜いたのだ。
舞台一転。
パイプオルガンが鳴り響くホールで、ゲイリー・ギルモアは死刑を宣告される。実は、彼自身も死刑は望むところだった。モルモンの教えに従い、地面に血を流して死にたいと思っていた。
死刑執行は、アリーナ状の塩湖。ロッキー山脈の麓、檻に囲まれた会場に牡牛が放たれ、死のロデオが始まる。
一方、ゲイリー・ギルモアの祖母、フェイは奇妙な予言をしていた。時を超えて「脱出の名人」のハリー・フーディーニが現れる。そして、ゲイリー・ギルモアに脱出と入替りの極意を伝授するとの予言である。しかも、ハリー・フーディーニはゲイリー・ギルモアの祖父だという。
ところが、ハリー・フーディーニの元にはフェイ自身が行くことになる。マジックを終えた直後、フェイは女王蜂の生涯を語るのだった。
ノーマン・メイラーのベストセラー小説「死刑執行人の歌 ― 殺人者ゲイリー・ギルモアの物語」」(1979)を、マシュー・バーニーが独自の解釈で映像化!舞台となるユタ州の土地柄を活かし、ギルモア家の血縁に蜂の生態を絡めている。
『クレマスター』シリーズ全5部作の中で、唯一、台詞があるドラマ仕立ての作品となる。制作関係者が「ゴシック・ウエスタン」と呼ぶ作風だ。
CREMASTER 2, 1999 Photo Michael James O’Brien © Matthew Barney, courtesy Gladstone Gallery, New York and Brussels
【台詞訳】面談のシーン(フェイの向かいに、ベッシーとフランクが座る)
フェイ(ゲイリー・ギルモアの祖母):
ようやくお会いできましたね。
さぁ、解き放つのです。
力を抜いて、鉄をも砕くほどに…
ベッシー・ギルモア(ゲイリー・ギルモアの母):
この一節を受け止めて。
宇宙の秘密。
それは…すべての形、すべての真実、すべての愛と光が響き合い、秩序を保ち、相互関係を持つもの。
すべては一点に集まり、強く結ばれるのです。
フェイ:
誰も私に手を出せない。
そう、私はフェイ!
フランク・ギルモア(ゲイリー・ギルモアの父):
誰も俺に手を出せない。
そう、俺はフランク・ギルモア!
【台詞訳】1893年の万博会場シーン(マジック終了後のハリー・フーディーニにフェイが声がけ)
フェイ:すいません
ゲイリー・ギルモア(1940-1977)
米国の死刑囚。
両親への反抗から、少年時代より傷害事件を起こし刑務所生活を送る。
父親から虐待を受け、母親は敬虔なモルモン教徒だった。
仮釈放中、母の故郷となるユタ州で殺人事件を起こす。
ガソリンスタンドとモーテルでモルモン教徒の青年2人を殺害し、死刑の判決がくだされている。
当時、アメリカでは10年近く死刑執行がなく、世論は死刑廃止へ向かっていたにもかかわらず、自ら銃殺を希望。
1977年ユタ州ドレイバー刑務所で銃殺刑に処せられた。
この事件を綴ったノーマン・メイラーの小説「死刑執行人の歌—殺人者ゲイリー・ギルモアの物語」(1979)は空前の大ヒットとなり、トミー・リー・ジョーンズ主演でテレビドラマ化されている。
実兄のマイケル・ギルモアが著した「心臓を貫かれて」(1994)は「ローリングストーン」誌に掲載。村上春樹が翻訳している。
ノーマン・メイラー(1923-2007)
米国の小説家、ジャーナリスト、エッセイスト、劇作家、脚本家、映画監督。
1960年代後半に生まれたニュー・ジャーナリズムの父とされ、1968年「夜の軍隊」でピューリッツァー賞ノンフィクション部門と全米図書賞の二冠に輝く。
1980年には「死刑執行人の歌—殺人者ゲイリー・ギルモアの物語」(1979)でピューリッツァー賞フィクション部門も受賞。
マシュー・バーニー『クレマスター2』(1999)では、「脱出の名人」と異名を取ったマジシャンのハリー・フーディーニ役を演じている。
画像出典:http://cremaster.net/
「フィールド」エンブレム
1987年「拘束のドローイング1」で初登場以来、マシュー・バーニーが頻繁に使用するシンボル。もちろん『クレマスター』シリーズでも多用。
楕円に長方形が重なる形で、楕円の部分が身体を表し、中央に重なる長方形が負荷を意味している。
『クレマスター1』あらすじは、こちら
『クレマスター3』あらすじは、こちら
『クレマスター4』あらすじは、こちら
『クレマスター5』あらすじは、こちら
2020年2月29日(土)〜3月15日(日)、東京都写真美術館ホールで予定したマシュー・バーニー『クレマスター』サイクル全5部作(1994-2002)の上映は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、2月26日(水)の首相要請を受け、開催を延期させて頂きました。
上映の日時が再調整でき次第、あらためて本サイトにてお知らせします。
ご迷惑をおかけしますが、ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。
2020年2月26日(水)
トモ・スズキ・ジャパン有限会社 社長 鈴木朋幸
Commentaires